あの雨の日、きみの想いに涙した。
体に力が入らない。これは本当に俺の体?
俺、今ちゃんと息できてる?
男たちの笑い声が一斉に辺りに響いた。
「え?どうしちゃったんですか冴木くん」
「今日は随分弱々しいじゃん。モヤシじゃね?こいつ」
「魂抜けてね?生きてんの?死んでんの?どっち?」
高笑いする声の中で、座りこんでいるコンクリートが冷たい。体温を全て取られたかのように俺の体は冷えきっていた。
なんで俺、座りこんでるんだ?
なんで俺、笑われてるんだ?
……いや違う。これが本当の俺だ。
よくあいつに突き飛ばされて、そのたびに立てなくなった。
それが続けば続くほど俺は立つことを止めた。
立たなければそこで終わる。そう思ったのに暴力は激しく俺に牙を向く。
この時、はじめてわかった。弱いふりをしても暴力には全く効果がないってこと。
喧嘩は強い相手を求めるけど、暴力は弱い相手を求める。
俺を殴り続けていたあいつは、俺を殴ることで不満や欲求を満たしていた。たぶん目の前のこいつらもそうだ。