あの雨の日、きみの想いに涙した。
だからこそ、弱さで暴力に勝てないなら強くならなきゃと思った。相手がネジの一本ぶっ飛んだイカれた野郎なら、自分は二本ネジを外してやる。
「ちょっとこいつ人通りがないあっちに連れて行こうぜ」
「今まででかい顔されてきたからな。たまには痛い目に合っていただかないと」
男たちは俺の腕を掴んで強引に立たせた。そして俺はまるで人形のように人気のないところに連れていかれた。
「じゃ、始めますか」
……ドスッ。
その合図とともに、ひとりの拳が勢いよく腹のみぞおちにめり込んできた。
俺は変わろうとしていた。今までなくしてきたものを取り戻したいと思っていた。
……ドスッドスッドスッ。
顔の左側から拳が飛んできて、続いて右。また左と次から次へと飛んでくる。口の中が血の味でいっぱいになった。
変われると思った、こんな俺でも。
〝リリリリーン〟
聞こえるはずのないあのベルみたいな電話の音が耳の奥で聞こえた気がした。