あの雨の日、きみの想いに涙した。
ほら、すぐに過去に引き戻される。
あんな電話で、あんなあいつの言葉で。
俺だってこんな風になりたかったわけじゃない。
俺だってこんなに傷つきたかったわけじゃない。
「おい、こいつ意外と丈夫だな」
「つーか俺の友達の彼女こいつに食われたらしいから手加減なしにやっちゃっていい?」
……ドスッドスッドスッドスッ。
体が右から左、前から後ろに激しく揺れる。視界がぼんやりとしか映らなくなった。
この暖かいのは血?俺の血……?
――『だって俺たちは血が繋がってるんだから』
ドクン……ッ。
「てめえは顔しか取り柄のないくせに女に不自由しなくていいよな」
――『昔っからお前は俺に似てたから』
ドクン……ッ……。
「そんな綺麗な顔で生んでくれた両親に感謝するんだな」
――『お前は俺の息子で俺はお前の父親だ』
固い拳がガンッと顔面に当たって俺の頭が後ろへと揺れた。
「へへっ」と得意そうに笑う男の顔面に骨の折れた俺の右手が飛ぶ。
骨の軋む音と一緒にバコッと鈍い音が裏通りに響いた。男はそのまま大の字で後ろに倒れてこんで、そのまま起きなかった。