あの雨の日、きみの想いに涙した。
「……っ」
今まで余裕な顔でヘラヘラしていた男たちが一瞬でどよめく。俺はそっと自分の額から大量に流れるなにかを手で触った。
暗くてよくわからないけどやっぱりこれは血か。
ズキズキと今さらながらに痛むあちこちを手で触りながら確認して、折れている右手に力を入れた。
「俺を殴れて満足か?」
そう言ったあと、俺は男たちに向かっていった。
ドスッドスッ……ドスッドスッと絶え間なく男たちを殴り続けた。殴りながらはじめて男たちの数が四人だったことを知った。
ドスッドスッっと俺が殴れば後ろから蹴りが飛んでくる。
そいつを殴ればべつのヤツが俺を殴る。
拳の感覚がない。でも俺はやめない。
だってあいつの息子なんだから。
俺のことを冷たい人間だとみんなは言う。
俺のことをおかしいヤツだとみんなが言う。
そんなことは当たり前だ。
心を冷たくしなければ、心を閉ざさなければいけない理由がたくさんある。
頭の一本や二本ネジがぶっ飛ばなきゃ受け入れられない現実がある。
頭がおかしくならなきゃ生きていけない痛みがあるんだ。