あの雨の日、きみの想いに涙した。
青木はなにも言わずに俺を見つめていた。俺は淡々と喋り続けた。今までのことを説明するのに時間はかからない。
小さい頃から父親に暴力を振るわれていたこと。
母親はそれに耐えきれなくなって俺を捨てて自殺したこと。
そのあとも暴力は続いて、俺はばあちゃんとじいちゃんと暮らすことになったこと。
そんな俺は過去に受けた傷が癒えないまま成長してこんな人間になったこと。
それでじいちゃんもばあちゃんも死んで俺の肉親は殺したいほど憎い父親だけになったこと。
そして今日父親から5年振りに電話が掛かってきて、お前は俺の息子だって当たり前なことを言われたこと。
ここまでが俺の人生。
本当にちっぽけですぐに説明できてしまうほどの人生。
今の俺に心を隠すなんて気持ちはどこにもなかった。過去の話は俺の心の全て。俺は動かない右手をプルプルと自分の胸に押し当てた。
「……俺がほしかったのはだれかとの繋がり。それなのにあいつとは血で繋がってるんだと思ったらどうしていいかわからなくなった。もうガキじゃねーのに」
手の震えが止まらない。
もう痛さなのか寒さなのかわけわかんねーや。