あの雨の日、きみの想いに涙した。




違うはずなのに、今まで見てきたもの、感じてきたもの、触れてきたもの全てが青木とは違うはずなのに……。

繋がってる手の感触だけは同じような気がして、俺はまた青木の顔が見れなくなった。


なんなんだろ、この気持ち。

こんな気持ち知らない。こんな暖かい気持ちなんて……。


「それに……」

「……?」

「捨てられたなら私が拾ってあげる」


い……息が止まるかと思った。 


たぶん、きっと心の中で引っ掛かり続けていた。俺は大切な人に捨てられたと、見捨てられた可哀想なヤツだと。


俺の心はいつも雨。降り止むことを知らない。

涙は枯れてしまったんだと思っていた。

世界中でだれも知らない。

こんな言葉で心が暖かくなることを。

世界中でだれも、いや俺だって知らない。


こんな言葉が涙が出るほど嬉しいことを。


涙は枯れた。枯れたはずだったのに頬をつたう雨とは違うこの滴はなに……?
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