あの雨の日、きみの想いに涙した。




俺は動かない体を昨日のように気合いで起き上がった。

「……っ」

今日は学校だけどこれじゃ行けるわけがない。
かといって一日中寝ていたいけどそうもいかないのが現実。

殴られた痛みやアザはその内治るけど、さすがに折れた右手をこのままにしておくわけにはいかなかった。

はあ……面倒くせー。


とその時、ピンポーンと家のチャイムが鳴った。

この家に人が訪ねてくるのは数年ぶりだ。いつもなら絶対に居留守を使うけど、今は確認しなくてもだれが来たかわかる。

壁にもたれながら玄関に行って扉を開けるとそこには青木がいた。


「よかった。起きてたんだね」

青木の両手にはふたつのビニール袋。青木のことだからまた色々と買ってきたに違いない。

突然女が家に来るなんて普段の俺なら警察を呼ぶか門前払いをするところだけど、青木は昨日と同じようにうちへと上がり込む。

ズカズカと俺の領域に入ってくる女は一番嫌いだけど、青木の行動は嫌ではない。


それは俺がこんな状況だから?

それとも青木だから?

答えなんて決まってる。過去の話をした瞬間から青木は他の人とは違う存在になっているんだから。
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