あの雨の日、きみの想いに涙した。
……ばあちゃん。これでやっと母さんとじいちゃんに会えるんだな。
今だから言うけど、本当は今日俺はここに来るつもりはなかったんだ。
ばあちゃんが死んだって聞いて、あいつから電話がかかってきた時から正直ずっと迷っていた。
家族、という形はいびつだけどたしかに存在していた時があって、ばあちゃんは母親代わりとして一生懸命俺に接してくれていた。
俺の好きなものも作ってくれたし、学校に持っていく弁当だって慣れないのにおかずをたくさん詰めてくれた。
愛情なんて忘れていた俺に愛情を向けてくれた人だった。感謝してる。言葉で言い表せないくらい。
だから、そんな繋がりも消えて、いびつだったけどたしかにあった温もりがある家も消えて。じゃあ、俺にはなにが残ったのかなって。
この寂しさだったり、孤独感だったり、そういうのを認めることさえ怖かった。だから今日ここに来たくなかった。
だってさ、空に流れていくばあちゃんを見たら俺までそっちに行きたくなるよ。
でも俺はもう決めた。簡単にはそっちに行かない。
俺は、まだまだ自分は子どもだと思ってた。でも死ぬとか生きるとかそんなことを自分で決められる年齢にいつの間にかなってた。もう子どもだなんて言ってられないよな。
俺は今もギリギリのところに立っている。
たぶんこれからもすぐに落ちこんで、すぐにダメになると思う。
だけどだれかのひと言で明日も生きていけるようなそんな気もするんだ。
俺はそんなことを語りかけながらばあちゃんを空へと見送った。