あの雨の日、きみの想いに涙した。



それから外に出て、俺たちは駅に向かった。香月駅から白石高校までは6駅。青木が通っている南女子校はそこから3駅先だった。

また一緒に電車に乗ったら噂にされるかもと心配になったけど学生は見当たらなく少しホッとした。

電車でも青木は自然と俺の隣に座る。窓から暖かい日差しが入ってきて、もっと長く乗っていてもいいかなと思うほど振動が心地よかった。


ここ数日の間で色んなことがあったけど、今こうして俺がいるのは青木のおかげだと思う。大袈裟ではなく、絶対に青木のおかげだ。


「次は白石駅、次は白石駅」

車内でアナウンスが流れて俺は腰を上げた。プシューッとドアが開いて青木が笑って「またね」と手を振る。


「青木……」

「んー?」

「俺……青木がいたから今も生きてるよ。それで、これからも生きていけると思ったよ」


あの雨の夜。本当にこのまま死んでしまってもいいとさえ思っていた。


傷ついて、壊れて、殴られて、殴って心も体もボロボロだった。そんな俺がこんなにも穏やかな気持ちになれるなんてだれが想像しただろうか。

青木はそのあとなにも言わなかった。

その代わり瞳から光ものが見えた。それが嬉し涙なの、それともべつの涙なのか。俺にはわからなかった。

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