あの雨の日、きみの想いに涙した。
そんなことを考えていると、キィ……と屋上のドアが開く音がした。
「由ー希」
リズミカルに俺の名前を呼ぶ女は寝ている俺の隣に小さく座る。……あれ?この女は……。
俺は記憶の糸を辿ってみた。たしか前に青木の顔が浮かんで行為の途中で止めた時の女だ。
「由希、本命の子ができたって本当?」
そういえば数日前にそんな噂が流れたんだっけ。いや、いちいち否定するのが面倒になって自分で認めたような気もする。ここ数日色んなことがありすぎてそんなこと忘れてた。
今までの俺なら隣に座られるのも、こんな風に質問されるのも嫌だった。だけど今日の俺はそんな気持ちにはならない。
青木と接したことで俺の心の氷は溶けはじめていた。そして最低だった自分も少しずつだけど消えようとしてる。
女はなにも言わずに俺が答えるのを待っていた。俺はゆっくりと仰向けだった体を起こして口を開く。
「わかんない」
そうシンプルに答えた。
本命の女も好きな女もいないけど否定はできなかった。だから、わからないが一番正しい答えだと思う。