あの雨の日、きみの想いに涙した。
女は自分で質問をしたくせにすごく驚いた顔をしていた。
まあ、今までの俺ならこんな質問には答えないし、女とこんな風に会話をすることもないから。女は嬉しいような、切ないようなそんな複雑な表情をしていた。
「由希って冷たい人かと思ってたけど本当はそうじゃないよね」
その言葉に俺は青木とはじめて会った日のことを思い出していた。
「……それ言われたの2回目」
俺は自分のことを冷たい人間だと思ってる。でもそうじゃないと言うヤツには一体俺がどんな人間に見えてんのかな。
「由希って本当は優しい人だと思う。でもね、人って冷たくされたら冷たくしたくなるし、優しくされたら優しくしたくなるんだよ」
それなら、やっぱり今までの俺は最低だったのかもしれない。
俺にとって女はいつも面倒な存在で、うざいというひと言で片づけてきた。女も俺を暇つぶしに利用してるんだから、俺も暇つぶしに利用しようと思ってた。
でもそんな女ばかりじゃなかったのかもしれない。
俺の中で女はみんな同じ扱いで、それで傷ついた人もいるのかもしれない。
「だからね、由希がこんな風に話を聞いてくれたらみんな話を聞いてくれるし、優しくしたらきっと優しくしてくれるよ」
本当にそのとおりだと思った。
「うん」
情けないけど、これに気づけたことは俺にとってはすごく大きいこと。
もっと他に返事の仕方があったのかもしれないけど、なんだか胸が苦しくて、これが精いっぱいだった。