あの雨の日、きみの想いに涙した。
そして4限目のチャイムが鳴り、俺は屋上を出た。廊下は学食に向かう人や弁当片手にはしゃぐ生徒たちがたくさんいて、すれ違う人たちがみんな俺の顔に注目する。
俺はなるべく廊下の隅を歩きながらうつ向いた。
一応腫れは引いてるんだけどそんなに傷、目立つかな…。教室に行くといち早く竹田が近づいてきた。
「さ、冴木!お前4日もなにして……ってどうしたんだよ。その顔」
学校を休んだことよりも顔の怪我のほうが気になるらしい。どうしたって聞かれても……。
「喧嘩した」
これ以外説明の仕様がない。
「喧嘩?お前に喧嘩売って勝てるなんてどんなヤツよ?」
なんで俺が負けた前提なんだよ。まあ、たしかに今の俺は負けたヤツの顔だけど。明らかに殴られすぎだし、それで4日も休んでたら勝てたとは言えない。
「お前が休んでる間、女子たちがいろいろ噂してたぞ。『由希が学校辞めたんだって』とか『本命の子と駆け落ちしたらしい』とか」
なんだそれ。ありもしないことをよく次々と思い付くなって思う。俺を噂するよりも他にやることがあるだろ。
「あとは子どもができたとか」
……は?子どもって。そんなデタラメなことを流したヤツはだれだよ。
「なにもしてねーのに子どもができるかよ」
思わず出た言葉に違和感を感じた。それは竹田も同じだったみたいで……。
「え、なにもしてないってだれのこと言ってんの?もしかしてなっちゃ……痛っ!」
ニヤつき顔がムカついて俺は竹田の頭を叩く。
「なにすんだよー!お前から言い出したことだろ!」
「青木とはひと言も言ってない」
「でも図星だから叩いた……嘘です。ごめんなさい」
ギロリと鋭い視線を送ると竹田はやっと黙った。でもたしかにあの言い方じゃまるで本当に相手がいるみたいに聞こえてしまう。
……なんであんなこと言っちゃったんだろ。