あの雨の日、きみの想いに涙した。
竹田と言うとおり俺がいなかった数日の間で噂は学校中に広まっていた。
教室を出るたびに色んな人からの視線が痛い。
少し前なら必ず女たちに囲まれて質問攻めにされるところだけど、今回それはなかった。
〝本命の人ができた〟という噂が相当大きいのか必要以上に近づいてこない。
俺としてはありがたいことなんだけど、無言でジロジロ見られるぐらいなら直接言ってきてくれたほうがマシだったかも……。
「ちょ、由希!子どもできて学校辞めるとかマジ?」
そう、こういう女みたいに。
名前はわからないけど多分三年だと思う。女はガシッと俺の腕を掴んできた。
「ねえ、由希嘘だよね?」
振りはらわれると思っているのか、その手には力が入っている。
「学校も辞めないし、子どももできてないよ」
俺は腕を振りはらうどころか、ちゃんと目を見て質問に答えた。すると女の手がゆっくりと俺から離れていく。
「……ゆ、由希どうしたの?」
その目は信じられないようなものを見るような目で、相当俺が質問に答えるとおかしいらしい。そんな姿を見ていた女たちがまたザワザワとしているのを感じた。
質問に答えたぐらいで大袈裟だな。俺って今までどんだけ嫌なヤツだったわけ?
でも……悪くない。
今まで嫌なことばかりで注目を浴びていたけど、こんな風に俺の〝変化〟に気づいて注目されるのはわるくないと思った。