あの雨の日、きみの想いに涙した。





それから数日が経って、俺は普段どおりの生活に戻っていた。

体の痛みやアザはすっかり治って、顔の傷も少しかさぶたができているぐらいだ。唯一残っているものといえば全治1か月の骨折ぐらい。それなのに……。


「なあ、お前元気なくない?」

1限目の授業が終わり、竹田がそう言いながら俺の前の席に座った。

「なんで?」

元気ないわけねーだろ。体もぜんぜん痛くないし、しいていえば授業がだるいぐらい。


「いや、冴木がテンション低いのはいつもだけどさ。なんかあったのかなって……」

「は?なんかってなにが?」

その続きを急かすと、竹田はチラッと俺の机に置いてある〝あるもの〟に目を向けた。


「だって最近いつもスマホばっかり気にしてるじゃん」

その言葉に正直ドキッとした。

たしかにいつもスマホはズボンのポケットに入れているのになぜか最近は机の上。充電も家に帰るまで満タンなのに、今は昼になる前に半分近くなくなる。


「連絡待ってるなら自分からすればいいのに」

連……絡?俺がだれの?俺がだれに?


「はあ……わけわかんねーこと言ってんじゃねーよ」

いつもならここで竹田を睨みつけるけど俺の目線は窓の外へ。


「ほら、ため息。最近しょっちゅうため息してるぞ」

「今のため息はお前に対してだよ。青木に向けてじゃねー……あ」

自分で自分の墓穴を掘った。竹田はニヤニヤと笑うだけでそれ以上なにも言わなかった。

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