あの雨の日、きみの想いに涙した。
授業が終わって俺は廊下に出た。竹田に『連れション行こうぜ』と誘われたけど速攻で無視。男同士でトイレ行ってなにが楽しいんだよ。
「由希やっほー」
そんな中、ひとりの女に声をかけられた。
茶髪に厚化粧で派手な見た目。馴れ馴れしく俺の腕に手を絡ませてくるのを見て、自然に顔が強ばった。
「ふーん。みんなが言ってたことは嘘じゃなかったんだ」
女は感心しながら、俺から手を離して距離をとった。
みんなが言ってたこと……?
「由希が変わったって。女の子に優しくなったってみんな噂してるよ?」
……べつに優しくなんかしてない。ただ〝普通〟になっただけ。女に話しかけられても無視しないし、手もすぐにはらわない。質問にも答えるし、ちゃんと立ち止まって話を聞く。ただそれだけのこと。
「……でもさ……」
女はが怪しげに口元をゆるます。
「由希が変わっても、今までやってきたことがナシになるわけじゃないよね」
俺の眉がピクンと反応した。女はスタスタと歩き出し、もう一度こっちに目を向ける。
「今日は夕方から雨だよ。残念だね」
その言葉を言い残して。