あの雨の日、きみの想いに涙した。



青木は傘をさして鍵がかかっているプールの入り口に寄りかかっていた。まだ俺がいることに気づいていないみたいで、ただ星が見えない空を眺めている。

俺は青木がいてホッとしたのが半分。もう半分は……やっぱり〝いると思った〟


「おい。お前のせいで雨に濡れたんだけど」

俺がそう声をかけると青木がこっちを見た。

その顔は〝やっぱり来ると思った〟そんな顔をしていた。


俺は青木に近づいて傘と傘がぶつかるギリギリの距離で止まった。言いたいことはいっぱいあった。

〝メールぐらい返せよ。呼び出したのはお前だろ?〟

でも顔を見たらどうでもよくなってしまった。


「雨降っちゃったから星見れないね」

青木の傘を持つ手が微妙に強くなる。俺はそれを見て雨音にかき消されないように言った。


「本当は違う理由で呼び出したんじゃないの?」

ここに来る間ずっと考えていた。青木は星を見るのが好きで、この場所だってプールに映る星空が綺麗だからと言っていた場所。そんな青木が天気予報をチェックしないわけがない。


今日だって本当は雨が降るって知っていたんじゃないのかな。だけど星を見ようと俺を呼び出した。

星は口実で本当は俺に用があったんじゃないかって、勝手に解釈していた。

青木はフッと笑ったあとに、「当たり」と答えた。
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