あの雨の日、きみの想いに涙した。



「私の生まれは香月町。生まれた時から小学校までこの町で育ったの。小学校卒業と同時にお父さんの仕事の関係で都内に引っ越したんだけど、もし引っ越してなかったら私もここの中学だったんだよ」

……考えてみればそうだ。青木は俺と同じ町に住んでいるのにこの中学じゃなかった。


「小学校のときにできた親友とは中学卒業までずっと文通してた。それで私は南女子校に入学してこの町に帰ってきたの。両親はまだ都内で暮らしてて今は一人暮らしなんだけどね」

青木の言葉が僅かに止まる。

「そ、それからね……」と青木が声を出すと周りが急に静かになった。


屋根を叩く雨の音がしない。立ち上がって確認すると、絶対に止まないと思っていた雨が嘘のように止んでいた。


「……あ、ごめん。それで?」

話の腰を折ってしまったと慌てて振り向くと、青木は「ううん。大丈夫」と言って結局それ以上なにも言わなかった。

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