あの雨の日、きみの想いに涙した。



「雨止んでも今日は絶対に星は出ないね」

青木は空を見た。雨上がりの空気と匂いが肺を通って外へと逃げる。俺はそんな青木の横顔を見て少しだけ視線を止めてしまった。


「……べつに星が出てなくてもいいよ」

深い意味なんてないけど、なんとなく星を口実に俺に会おうとした青木が気にくわなかった。


晴れた日じゃなくても、綺麗に星が見える夜じゃなくても、青木が俺に用があるなら、いつだって会っていい。こんな雨の日だって。


屋根から伝ってくる滴の音がどこかからピチャ……ピチャと聞こえていた。

俺たちは雨が止んでもこの場所を離れなかった。青木は通路から一歩外に出て、再び空を見上げる。

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