あの雨の日、きみの想いに涙した。
でも結局、愛なんてどこにもなかった。
その先輩とはそれっきり話すこともなかったし、そのあとも何人かと経験したけど愛なんて感じられなかった。
体と体は繋がっても、心までは繋がれないんだと知った。
そして俺は経験が増えてくたびに、最初に感じた人の温かささえ感じられなくなっていった。
……俺はただ目に見えないものを感じたかっただけなのに。
――ブーブー…と暗闇の中でスマホが光る。俺はベッドに横たわったまま手に取った。
確認するとそこには女の名前。
【今日彼氏と喧嘩した。今から会える?】
だれだっけ……?
スマホの画面に表示された名前を見ても顔すら浮かんでこない。俺はメッセージを返信せずにスマホを裏返しにした。