あの雨の日、きみの想いに涙した。
「例えば?」
少し興味があった。女が考えてる願いごとがなんなのか。
「うーん。痩せますようにとか?」
くだらねー願いだな。どうせ願うならもっと大きいことを願えよ。
「あー、あとは彼氏ができますようにとか」
その瞬間、青木と目が合った。ドクン……と小さく心臓が鼓動する。俺は目が合ったままなぜか動けなかった。
「……ま、まあ、私の願いじゃないけどね」
その空気を破ったのは青木だ。青木は不自然に俺との距離をとった。俺は青木の姿を目で追いながら鼓動した左胸を押さえていた。
青木の口から〝彼氏〟という言葉が出たとき、今までにない感情が溢れだしてきた。
青木は俺にとってすごく近い存在で他の人とは違う。
馴れ馴れしく触ってくるヤツとか体だけ求めてくるような人とは違うけど、青木も女なんだ。
バカげたことかもしれないけどそんなことを思ってしまった。
青木にもいつか彼氏ができたりするのかな?
青木が好きになった人で、青木のことが好きな特別な人間が。
怒ったり、泣いたり、笑ったり、俺が知ってる青木とはべつの顔になったりするんだろうか。
そしたらきっと俺たちはこんな風に会うことはない。