あの雨の日、きみの想いに涙した。
俺はいまだに恋愛がどんなものなのか知らないし、彼女とか彼氏とかそんな繋がりがほしいとは思わない。
たぶん自信がないから。
――『由希が変わっても、今までやってきたことがナシになるわけじゃないよね』
そうだよ。俺が変わってもスマホをリセットしてもナシにはならない。
たくさんの女と経験して、たくさんの女に触った。
こんな手でだれかを幸せにできるわけがない。
だけどこれだけは強く思う。
青木には幸せになってほしいと。俺にはできないから、だれかべつの人の手で幸せにしてあげてほしい。
「ねえ、私願いごとできたかも」
青木が俺を見ながら言う。
「奇遇だな。俺も」
「本当?教えてよ。私は言わないけど」
「バーカ。言ったら叶わなくなるんだよ」
「えー、じゃあ、私は一生言わない」
星ひとつない夜空の下、俺たちは笑い合った。
流れ星なんて生まれてから一度も見たことはないけど、今度星が綺麗な夜は空を眺めてみよう。
三回言える自信はないけど、すぐに言える願いごとはできたから。
〝青木が幸せになれますように〟
俺の中に生まれたはじめての願いだった。