あの雨の日、きみの想いに涙した。
今まで人が嫌いだった。だけど今はこうやってだれかといるのは嫌じゃない。むしろありがたいと思うようになっていた。
俺の心は明らかに変わっていってる。もしこのままいい方向にいけたら……。そう思いながら竹田と廊下に出た。
ノロケ話で興奮したせいか竹田が喉が渇いたと言い出したからだ。
「ひとりで買いに行けよ」と言おうとしたけど止めた。しかたないからたまには付き合ってやるよ。
食堂前の自動販売機に向かう途中、突然俺たちは呼び止められた。いつもなら呼び止められる原因は俺。言うまでもなく女絡み。でも今回は……。
「竹田くん。ちょっといいかな?」
顔を真っ赤に染めた同級生が後ろに立っていた。
竹田自身もかなり驚いたみたいで「え、お、俺?」と何度も確認している。
コクリと恥ずかしそうに頷く女の子を見て、竹田の顔もみるみる赤くなっていった。
恋愛に興味がない俺でも、この状況がなんなのか把握できる。
「飲みもの、代わりに買っといてやるよ」
俺はふたりから距離をとって歩きはじめた。
「え……さ、冴木?」と動揺している竹田の声が聞こえたけど俺は振り向くことはなかった。