あの雨の日、きみの想いに涙した。
一応俺なりに気を遣ったつもり。今どきあんなにわかりやすい女がいるんだな。
……いや、あれが普通なのか。
好きな人に好きと伝えるのに緊張しないヤツはいない……と思う。好きになったことも好きと言ったこともない俺にはわからないけど。
食堂に着いてとりあえず竹田の飲みものを適当に買った。
そのときトントンと後ろから肩を叩かれた。
「由希。なにしてんの?」
振り返ると女がいた。竹田を呼び止めた女は可愛げがあったけど、俺を呼ぶ女は派手な女しかいない。女の顔を覚えるのは苦手だけど今回の女には見覚えがあった。
――『由希が変わっても、今までやってきたことがナシになるわけじゃないよね』
そんなことを言ってきたあの時の女。そして……。
『今日は夕方から雨だよ。残念だね』
なぜか青木とのやり取りを知っていたみたいな口調。
「なんのジュース買ったの?」
女は何事もなかったように俺の顔を覗き込んでくる。やっぱりあの発言に深い意味はないのか?
……考えるだけ無駄か。女なんてなに考えてるかわかんねーし。
すると女は自販機に小銭を入れて、その手元を見ると俺と同じ飲みものを持っていた。
「おそろーい!」とわけがわからないことを言う女に俺は反応しなかった。
今までみたいに邪険にはしないけど、やっぱりこういう女は苦手だ。俺は早くこの場から立ち去りたくて歩き出そうとしたとき……。
「ねえ、昨日濡れなかった?」
また意味深な言葉が耳に聞こえた。