あの雨の日、きみの想いに涙した。
俺はそんなことを思いながら歩いていると前方から人影が見えた。日はだんだんと落ちはじめて、辺りはオレンジ色に染まっている。
俺は普段から自分がジロジロと見られる側だからかあまり人を見ない。
だけどなぜか今回はすれ違う人影が目に止まった。だってその人が着ている服装が見覚えのあるものだったから。
「あ……」と声を出したのは俺じゃない。その人は俺と同じ高校の制服を着ていた。
「また会っちゃったね。冴木くん」
そいつは紛れもない宮野麻奈だった。
なんでこいつがここに……?そんな疑問が真っ先に浮かんだけど、それを聞くことはなかった。
疑問を解決するよりも関わりたくない気持ちが上回ったからだ。
俺はコンビニの袋を揺らして無言で宮野麻奈の横を通りすぎる。宮野麻奈に会ったのは偶然か?
それでも自分が住んでいる町が知られてしまったのは事実。死ぬほど面倒だと思った。
「言っとくけどストーカーじゃないから、私」
背後で声がしたけど俺の足は止まらない。
「私は生まれも育ちも香月町だよ。ちなみにそのコンビニもよく行くよ」
俺は足早に歩き進めて、ふと後ろを振り返ってみた。
そこにもう宮野麻奈はいなかった。