あの雨の日、きみの想いに涙した。
そのうちまた青木の寝息が聞こえてきた。俺はそれを確認してべつの部屋にあった布団を部屋に運んできた。
やっぱりカビ臭かったけどこのぐらい我慢する。
いつの間にか時間は0時を過ぎていた。だれかの寝息を聞くのも、だれかと同じ部屋で寝るのも俺にとってかなり久しぶりのこと。そんなこと小さい頃にしか経験したことがない。
俺は布団に入りながらスマホで適当な動画を見ていた。テレビだと光が眩しいし、スマホだったら青木を起こすことはないと思ったから。もちろん音量はゼロ。
時間が進んでいくごとになぜか眠気が飛んでいく。動画にも集中してないし、まったく内容が頭に入ってこない。
……なんか俺、意識してる?
直感的にそう感じた。
それはヘンな意味じゃなくて青木が俺の部屋で寝ていることが今さらながら信じられない。
思えば初めて会ったあのとき、青木の印象は最悪だった。
猫かぶり女で、俺のことを知りたいなんてわけわからないことを言われたり、土足で俺の心に踏みこんできて強引に居座った。
俺に限らず青木だって俺の印象わるかったはず。だって初日にアドレスが書かれた紙を俺は握り潰して捨てたんだから。それなのに青木はぜんぜん動じなかった。
そういえば、最初から青木は俺のことを知っていた。俺はある意味有名だし知っていてもおかしくないけど、でもなんで青木は俺の外見じゃなくて中身を知りたいと思ったんだろか。
たしかにあの日、俺と青木は初対面だったはず。
それなのにあんなにズカズカと近づいてくるだろうか……?