あの雨の日、きみの想いに涙した。



麻奈と言う名前を見た瞬間、あの女のことを思い出した。

麻奈なんて名前のヤツはいっぱいいるし、珍しい名前でもない。だけど、どうしてもあの女が頭に浮かんだ。

だって宮野麻奈が言った意味深の数々。まるで俺と青木のやり取りを知っているような口調。

もし青木とあの女が知り合いなら全て辻褄が合う。


〝宮野麻奈って知ってる?〟

そう青木に聞けばなにもこんなに考えることはない。

でも俺は聞かなかった。いや、聞けなかった。


だって辻褄は合うけれど、もし青木と宮野麻奈が知り合いだったら生まれてくる疑問がたくさんあったから。


宮野麻奈は俺と同じ中学だった可能性が高い。もし俺のことを青木に話していたのなら、あの合コンの日に俺を知っていた青木の行動は理解できる。

だけど星を見に行った夜。青木に案内された場所で俺がここの卒業生だと言ったら、かなり驚いていた。

宮野麻奈と知り合いならば俺があの中学に通っていたことを知っていたはず。

それに……。宮野麻奈は中学だけじゃなく高校も同じだ。友達ならば私の友達も冴木くんと同じ高校でね……のひと言ぐらいあってもいいのに。


べつに言うも言わないも本人の自由だけど、普通の人なら言うはずだ。だけど一番の疑問は青木が俺に興味を持ったこと。

宮野麻奈の口調や行動からして俺のことをよく思っていないことは分かる。それなのに友達である青木は俺に近づいてきた。そして今はこんなにも近い距離にいる。


俺は一睡もしてない頭を使って色々と考えたけれど、結局答えは見つからなかった。

< 196 / 291 >

この作品をシェア

pagetop