あの雨の日、きみの想いに涙した。
「冴木くんが私を呼び出すなんてどうしたの?」
今まで数々の意味深な発言を口にしてきたくせに、わざとらしく俺に問いかけていた。
「……お前、俺と同じ中学だった?」
太陽で熱くなったコンクリートの上に映し出されるふたつの影。生暖かい風が通りすぎてお互いの髪がふわりと動いた。宮野麻奈は乱れた横髪を耳にかけてクスリと笑う。
「その質問おかしくない?普通同じ中学だったらわかるでしょ?」
たしかに同じ中学だったなら覚えていないわけがない。例え交流がなかったとしても三年間同じ校舎で過ごした同級生がわからないことなんてないだろう。
でも俺は普通の人とは違った。周りの人間にも自分のことにすら興味が沸かなかった。
「冴木くんが覚えていないなら私は同じ中学じゃなかったんじゃない?」
「もうそんな遠回しなことはいいから。目的はなに?俺が気にくわないならそう言えばいい」
裏で俺を恨んでいるヤツは山ほどいるし、文句や悪口も散々言われてると思う。
そんなのいちいち気にしてたらキリがないし、謝るにも傷つけた人が多すぎて把握できていない。
宮野麻奈もそのひとりなら俺は謝罪でもなんでもする。