あの雨の日、きみの想いに涙した。
「邪魔だから退けよ」
俺は女を睨みつけた。
「嫌だ。由希が私と遊んでくれるまで退かない!」
頬っぺたを膨らませてだだをこねる女。だから可愛くねーって。
「まだ彼氏と喧嘩中なの……。由希慰めてよ」
今度はウルウルと上目使い。こういう顔をすれば男は弱いとわかった上でやっている見え透いた計算。
「私に彼氏がいるから遊んでくれないのー?」
「………」
「それなら彼氏と別れる!ねえ、それならいいでしょ?」
こういう女は寂しさを埋めるためなら簡単に体を許す。バカはバカでも頭の弱いバカ。
屋上なんて行かなくてもそこら辺の階段の下で十分だ。
俺は不適に微笑んで、女の唇を手でなぞる。
女はトロンとした瞳をして俺は唇に向かって顔を近づけた。……そして。
「なんか勘違いしてない?」
寸前で動きを止めた。
女は「え?」と目を丸くさせていて、顔を近づけたまま唇と唇が触れあう寸前で喋り続けた。