あの雨の日、きみの想いに涙した。
「私まだお昼ご飯途中なの。いい加減もう教室に戻っていいかな」
そう言うと俺に背中を向けて屋上のドアまで歩いていく。俺はそんな後ろ姿を見つめながら声を振り絞った。
「あ……青木夏月って知ってる?」
心の中で知らないでほしいと願った。俺の勘違いであってほしいと。
宮野麻奈の足は止まらずにその手はドアノブへと触れる。そして……。
「それ、どうして本人じゃなくて私に聞くの?冴木くんでも怖いものってあるんだね」
バタンと屋上のドアが閉まる。
決定的な言葉は言わなかったけど、宮野麻奈と青木夏月は知り合いだ。確実に。
たくさんの疑問が浮かび上がってくる中で俺はひとり空を見上げた。
〝冴木くんでも怖いものってあるんだね〟
先ほど言った宮野麻奈の言葉が胸を突き刺す。
そう、俺は怖かった。だから青木に直接聞くことができなかった。
もし宮野麻奈と青木が知り合いだったなら、青木は数々の嘘を俺についてることになる。
俺はただ怖かった。今まで見てきた青木の行動や言動が全てが偽りのような気がして。
もしそうだったらと考えると怖くてたまらなかったんだ。