あの雨の日、きみの想いに涙した。



俺は暫く経って教室に戻った。そのまま自分の席に着いて気づくと「はあ……」とため息をはく。


「おいおい。そんなに露骨にため息ついたら幸せが逃げてくぞ」

ギィ……という音とともに竹田が俺の前の席に座った。竹田の手には食堂で買ったであろうカレーパンがひとつ。

もうすぐ5限目のチャイムが鳴るのに竹田はカレーパンを嬉しそうに頬張っていた。そんな竹田を見て心の本音が思わずぽろり。


「……竹田って楽しいこと見つけるのがうまいよな」

竹田はいつも楽しそうでだれよりも明るい。俺とは180度違う性格で、だからこそ竹田の明るさに救われる部分があるんだと思う。


「だってそのほうがラクじゃん」

「……?」

「俺だって悩みや不満はあるけど、いろいろと考えて生きるより楽しいこと見つけて生きたほうが楽しいだろ?」


………そっか。俺は今まで悩みや不満だらけの毎日を生きてきて、ずっとそれを背負ってる気分になっていた。

だけど解決しなくても重荷を背負ったままでも楽しく生きられる人間はいる。


笑いたくない時に笑って、悩みがないふりができるほど器用な人間にはなれないけど、嘘を許してあげられるような心の広い人間にはなりたいと思う。

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