あの雨の日、きみの想いに涙した。
『……お前なにを企んでる?』
父親は両手を挙げて喜ぶどころか、俺がすんなり受け入れたことに疑ってるみたいだ。
『なにも企んでない。アンタが言ったことを受け入れただけだ』
自分の出した答えに後悔なんてない。
この家は俺ひとりでは広すぎたし、売ってどこかにいる家族が住めるならそれでいい。
叶うなら元気な子どもがいる家族で、笑顔が絶えない明るい人たちがいい。
俺は暗い幼少時代を過ごしてこの家に住んでる間も笑えなかったから。ばあちゃんたちがいたこの家がだれかの笑顔で溢れるのなら、俺はそれでいいと思った。
『……受け入れたあと裁判でも起こすつもりか?俺を訴えるつもりなんだろ?』
父親はなにがなんでも俺を疑わなくては気が済まないみたいだ。
訴える……?そっか。そんなこともできたんだ。
でも俺はそんなことはしない。他人に判断を委ねるぐらいなら自分で決めるし、自分で決着をつける。
だって俺はもう子どもじゃないから。
泣いてるだけの子どもじゃないから。