あの雨の日、きみの想いに涙した。
・
次の日、俺はいつもより遅めに目が覚めた。
なかなか寝つけなかったのもあるけど今日は休日だし、早く起きる必要はなかったから。
青木は昨日使った食器や台所を綺麗に片づけて、遅くならないうちに家に帰っていった。
料理が並んでいた居間のテーブルも綺麗になっていて、少しだけ寂しさを感じたけれど、ある場所に目を向けた瞬間、自然と心が暖かくなった。
それはじいちゃんとばあちゃん。そして母親の仏壇。そこに供えられた綺麗な花が見えたからだ。
青木はいつも俺の家に来る時は花を供えて帰る。頼んだわけでも頼まれたわけでもなく、その優しさは全て青木の意思。本当に青木には感謝しても感謝しきれない。
唯一、今俺にできることがあるとしたらこの花が1日でも咲き誇れるように水を替えることぐらいだ。
俺は仏壇の前に座って正座をした。
こんな風に仏壇と向き合うのは久しぶりで、今まで三人の遺影すらしっかりと見ることはなかった。
一番の理由はやっぱり母親。母親が俺を置いて死んでいったこと。その全てが許せていなかったから。
だけど許せない気持ち以上に俺は母親のことが大切だった。だからこそ、今日の日まで母親がいる仏壇と向き合うことができなかったんだと思う。