あの雨の日、きみの想いに涙した。



俺は座っていた腰を上げて時計を見た。時間は11時を過ぎていて天気はいいけど出かける予定はない。

とりあえず腹ごしらえのために冷蔵庫を開けると、昨日青木が作ってくれた料理の残りが入っていた。

手作りの料理なんて滅多に食べられないから、本当は少しずつ食べたいけどそんなことをしたら腐ってしまう。

料理を取りだそうとすると、飲みものがないことに気づいた。空腹で少しだけ思考が止まったけど、俺はしかたなくコンビニに買いに行くことにした。


外に出るとやっぱり天気は晴天で、ゆっくりとこのまま散歩をするのもいいかなと思った。

「冴木……?」

コンビニが見えてきたころ、だれかに話しかけられた。

条件反射で思わず嫌な予感がしたけれど、振り向くとその予感は消え去った。目が合い数秒。俺は見覚えのある顔に記憶の糸を辿っていた。


「冴木……やっぱり冴木だよな」

その人物はそう言いながら俺に近づいてくる。その人物の格好は上下のジャージに動きやすい運動靴。


「……先生……」

俺はぽつりと呟いた。

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