あの雨の日、きみの想いに涙した。



きっと父親にとって暴力も逃げ道だったんだと思う。

表面だけはいい人間だったから。逃げ道が家庭の中でしかなかったんだと思う。


殴られ続けても父親と離婚しなかった母さんはきっとそんな父親じゃない一面も知っていたから。

だからこそ父親はなにをしても母さんが離れていかないと付け上がっていたんだと思う。


突然の失踪、そして自殺。

俺から見れば予想できた結末だけど、父親にとっては予想すらしていなかったのかもしれない。

母さんが自分から離れていくこと。死ぬまで追い詰めていたこと。


父親は今だにその事実を受け入れられていないのかもしれない。

本当はあの家だって、母さんの家だって奪う気なんてない。家の住所を知ってるなら、あんな電話をかけてこなくても方法はいくらでもある。


〝家族なんて作るべきじゃなかった〟

その家族の繋がりを断ち切れていないのは父親のほうだ。

唯一の家族である俺と電話一本で繋がった気でいる父親は本当にバカで、本当に不器用で、本当に家族の接しかたを知らない大馬鹿野郎だ。
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