あの雨の日、きみの想いに涙した。



その言葉を言った瞬間、心がスッと軽くなった。

ずっと重荷だった父親との繋がり。断ち切るのではなく、新たに結び直すと決めた。だってこんな人でも俺の親父なんだから。


「母さんが残してくれた繋がりだろ。それを断ち切ったらそれこそ俺たちは大馬鹿野郎だよ」

父親は肩を震わせて泣いた。人目も気にせず、カッコわるく声を出して。


父親を許せたわけじゃない。俺の過去の傷は消えないし、たぶん一生消えることはない。

だけど今なら夢の中まで追ってこない気がする。楽しい夢じゃなくても、母さんはきっと笑って夢に出てきてくれると思う。


……なあ、母さん。

今すぐじゃなくていい。何年経っても構わないから、いつか親父の夢の中でも笑って。

こんなことを頼む俺は本当にバカだけど、親父が変われたとき本当に変われたときに、どうか夢の中で会ってあげて。

許さなくてもいいよ。

怒鳴って殴ってもいいよ。

だからその代わり……〝後悔して死ぬまで生きろ〟そう言ってあげて。

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