あの雨の日、きみの想いに涙した。



「……え?」

青木の思考が一瞬停止したかのように止まった。

俺はそんな顔を直視できなくて、ただコンクリートの地面を見つめるしかなかった。思い悩んで言い放った言葉なのに、次の言葉がうまく出てこない。

深呼吸をして少しだけ顔をあげると、頭上にはすっかり暗くなった空と綺麗な星が無数に光っていた。


「……青木。もし今流れ星が流れたら俺は前と同じ願いを言うと思う。青木が幸せになれますようにって……そう言うと思う」

「………」

「青木はあの時どんな願いをしたの?」

「私は……」


青木はなにかを言いかけて、それ以上唇が動くことはなかった。

本当は……本当は、俺が願った願いを俺が叶えたかった。

青木の隣で、俺が青木を幸せにしてあげたかった。きっとこの言葉を言ってしまえば今までのことが全て偽りになる。ずっと怖くて聞けなかったこと。



「青木は宮野に言われて、俺に近づいたんだろ?」

ザーッと大きな風が吹き抜けて、プールの水が波打った。

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