あの雨の日、きみの想いに涙した。
もしかしたら青木は俺が気づいてることに薄々勘づいていたのかもしれない。だからこそ青木の返事はシンプルだった。
「……うん」
慌てるわけでもなく、動揺するわけでもなく、たったひと言の返事。物音ひとつしない静かすぎる空間で、俺の心臓の音だけがうるさく聞こえていた。
俺は心の中で宮野に言われた言葉を思い返していた。
――『同じように傷つけばいいと思った。だれか好きになってその気持ちを踏みにじられればいいって』
『だから夏月に頼んだのよ。冴木くんに近づいてって、冴木くんの心を奪ってって』
青木、今までのことは全部嘘だったの?
あのとき言った言葉も、あのときした行動も、全部俺の心を奪うためにした嘘だった?
こんなこと……こんなこと聞けるわけねーじゃん。
俺は目を瞑りうつ向いた。そんな中で口を開いたのは青木のほう。
「ごめんね」
その瞬間、ドクン……と心臓が鼓動する。まるでなにかのスイッチが入ったみたいにドクンドクンと鼓動が不整脈になる。
「……ごめんってなにが?」
聞かずにはいられない。
騙していてごめん?
嘘をついていてごめん?
今まで黙っていてごめん?
それとも心を奪ってごめん?
〝ごめん〟なんて一番聞きたくなかった言葉だ。