あの雨の日、きみの想いに涙した。
これ以上なにかを言えば余計に現実から逃げたくなるし、お互い気まずさが増すだけだ。
青木はスッと立ち上がり、数秒そのままだった。どんな顔をしているかなんて見れるわけがなくて、俺はずっとうつ向いていた。
「……私もね、あのとき冴木くんの幸せを願ったの」
〝青木はあの時どんな願いを願ったの?〟
その質問が今になって返ってくる。
俺のことが可哀想になったのかもしれないし、惨めに思ったのかもしれない。少しだけ苛立ちが沸いてきて、今なら嫌味のひとつでも言える気がした。
……だから女は嫌いなんだ。
青木を見ると、その瞳には今にも溢れそうな涙が溜まっていたから。
ああ、本当に俺はバカだ。『それなら青木が俺を幸せにしてよ』なんて言ってしまいそうになってしまった。
そのあと青木は「ごめんね」とまた小さく謝って、俺の前から去っていった。
ひとりになって俺は綺麗な星空に目を向けた。
今はなにも考えずただ星を見ていたい気分。
だけど星を見ると去ったばかりの青木の顔ばかりが浮かんでくる。だって星を見る楽しさを教えてくれたのは青木だから。
でもなんで星は綺麗なのにひとりで見る星と青木と一緒に見る星は別物に見えるんだろう。
虚しさだけがズシリと心にのし掛かった。