あの雨の日、きみの想いに涙した。
宮野はもう本心を隠すことはなかった。いや、もしかしたら初めから全てを言うつもりだったのかもしれない。
黒髪に戻した姿がその表れ。
「夏月に冴木くんの心を奪ってなんて言ったけど、本当はただ私が見たかったの」
「………」
『本当の冴木くんを。好きな天気は晴れで、嫌いな天気は雨。そんなことしか私は分からなかったから」
宮野はずっと俺のことを知ろうとしていた。
中学時代、教室の隅にいた俺たち。寄ってくる女は山ほどいて、毎日イライラしていた日々。だけど宮野はそんな俺じゃない〝俺〟を見つけようとしていたのかもしれない。
中学3年間、そして今も。
宮野麻奈はスタスタと歩き出して屋上の手すりに手をかけた。景色を見ながら、ぽつりと呟いた声は風に乗って俺の耳に届いてきた。
「本当は私が変えたかったな」
宮野が青木に近づくように頼んだのは俺に復讐するためじゃなかった。
どうしたって見ることができなかった俺の心を、俺の内側を引き出すためにしてくれたのかもしれない。
〝優しそうな人〟
そう青木は俺を見て言った。
きっと宮野は青木しかいないと思ったんだと思う。
俺への気持ちを隠したまま……自分ではムリだと分かっていたから。