あの雨の日、きみの想いに涙した。
「私、夏月に一切“こうして”なんて言ってないの。意味分かる?」
クルッと振り返った宮野は俺を見つめた。
「冴木くんにした行動も言動も全部、夏月の意思ってこと」
曇っていたはずの心の影が一瞬で晴れていく。
「それに〝心を奪って〟なんて願い、夏月が聞くわけないじゃない」
「どういうこと?」
「多分夏月、私の言葉でしか想像できなかった冴木くんのことが気になっていたんじゃないかな?中学の時からずっと」
諦めたはずのあの感情がじわじわと込み上げてくる。俺はとっさに右胸を押さえた。
そうしないと、自分でも押さえられないぐらい青木への想いが大きくなってしまう気がして。
宮野は再び俺の横に移動してきて地面に座った。
「冴木くんは覚えてないと思うけど、高校に入って一回だけ冴木くんのことを誘ったことがあるの」
宮野は苦笑いを浮かべて言った。
「経験したこともないのに、振り向いてもらえないならそういう関係でも繋がっていたいって思っちゃって……」
勿論、俺はその時のことを覚えていない。そんな女ばっか
りだったし、いちいち覚えていたらキリがないから。
「その時冴木くんは私になにもしなかった。それって私が遊びじゃなくて本気だって分かったからでしょ?」