あの雨の日、きみの想いに涙した。
確かに俺は本気の女とはしなかった。だってその場限りの関係で割り切れる人じゃないと後で面倒になるから。
「正直こんなに上手くいくと思ってなかったの。どうせ冴木くんは他の女の子と変わらない扱いを夏月にもすると思ってたし」
「………」
「冴木くんさ、夏月に指一本も触れなかったでしょ?」
その瞬間、太陽が雲に隠れて俺たちの頭上は影になった。
「それって夏月とそういう関係になるのが嫌だったから?それともただ単に面倒だっただけ?」
俺はなんで青木に触れなかった?
なんで青木には触れることができなかったんだろう。
だって、青木は本当に純粋で綺麗な心を持っていて、こんな俺が触れてしまったら青木が汚くなってしまう気がして……。
いや、違う。そうじゃない。
俺が青木に触れなかったのは……。
「冴木くんが夏月に触れなかったのは、冴木くんが本気だったからでしょ?」
雲で隠れた太陽が顔を出して、眩しいくらい俺を照らした。青木への想い。本当はどこかで気づかないふりをしていた。気づいてしまったら、もうどうしたって諦められないから。