あの雨の日、きみの想いに涙した。
「夏月は本当にいい子だよ。だから私に気を遣って自分の気持ちを隠そうとしてるけど。それは裏切ることにはならないから安心してって、さっきメールをしておいた」
「え……?」
「あとはふたりの問題だから」
宮野はどこかスッキリとした顔をしていた。肩の荷が下りたように「んー」と伸びをして、気づけば時間は後5分で二限目が終わる時間になっていた。
「結局サボっちゃったね。授業」
「はじめからサボる気だったくせに」
「はは、一回やってみたかったんだよね、こういうの。やっぱり根は優等生だからひとりだとサボる勇気もなくて」
こんな風に宮野と話せることが今でも不思議だ。でも絶対に宮野がいなければ、こうやって変われた俺はいなかったと思う。
「冴木くん。最後にひとつだけ言ってもいいかな?」
宮野は背筋を伸ばして俺のことを見つめた。
「私、ずっと冴木くんのことが好きだった」
宮野の真っ直ぐな想い。面倒くさいと、下らないと思っていた自分に向けられる好意がこんなに暖かくて、嬉しいものだと知った。
「宮野、ありがとう」
それと同時にチャイムが鳴り、宮野は満面の笑顔で屋上を出ていった。