あの雨の日、きみの想いに涙した。


「夏月は本当にいい子だよ。だから私に気を遣って自分の気持ちを隠そうとしてるけど。それは裏切ることにはならないから安心してって、さっきメールをしておいた」

「え……?」

「あとはふたりの問題だから」

宮野はどこかスッキリとした顔をしていた。肩の荷が下りたように「んー」と伸びをして、気づけば時間は後5分で二限目が終わる時間になっていた。


「結局サボっちゃったね。授業」

「はじめからサボる気だったくせに」

「はは、一回やってみたかったんだよね、こういうの。やっぱり根は優等生だからひとりだとサボる勇気もなくて」

こんな風に宮野と話せることが今でも不思議だ。でも絶対に宮野がいなければ、こうやって変われた俺はいなかったと思う。


「冴木くん。最後にひとつだけ言ってもいいかな?」

宮野は背筋を伸ばして俺のことを見つめた。



「私、ずっと冴木くんのことが好きだった」

宮野の真っ直ぐな想い。面倒くさいと、下らないと思っていた自分に向けられる好意がこんなに暖かくて、嬉しいものだと知った。


「宮野、ありがとう」

それと同時にチャイムが鳴り、宮野は満面の笑顔で屋上を出ていった。

< 277 / 291 >

この作品をシェア

pagetop