あの雨の日、きみの想いに涙した。




立ち止まっている俺の横を通り過ぎる同じ高校の生徒たち。チラチラと視線を感じたけれど今の俺にはそんなの関係なくて、ただ耳に聞こえる声だけを聞き逃さないようにしていた。

顔が見えないぶん、青木が今なにを考えているのかわからない。でも確実にこの電話は青木と繋がっていて、それだけで目に映る景色が変わって見える。


『青木。これは俺の勝手なエゴで勝手なワガママだから返事はしないでいい。でも、よく聞いて』


スピーカーから雑音や行き交うだれかの声が聞こえてくる。きっと青木も学校の帰り道。

目を瞑って想像すると、ジッとスマホを耳に当てながら俺の言葉を待っている青木がいる。

俺は今までのことを思い出して、その全てを口にした。


『俺は最初は青木のことが苦手だった。ズカズカと俺の心に踏み込んできたこと。ハッキリと自分の意見を言うこと。全部鬱陶しいと思ってた』


〝冴木由希が自分の心を離そうとしないからよ〟

そう言われた時、今までにないぐらいムカついて腹がたった。なんで会ったばっかりのヤツにそんなことを言われなきゃいけないんだと思う反面、図星だったから。

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