あの雨の日、きみの想いに涙した。
だけど今までの出来事が全て偽りだったとしても、もうべつにいい。
俺は青木という人間に会って変わって、泣いて、笑って、許して、それで大切になった。
たったそれだけのこと。
たったそれだけのことが青木とだからできた。
いや、青木とじゃなかったらできなかった。
『違う、違うよ。嘘なんてひとつもなかった』
右耳に当ててるスマホからではなく、なぜかそれはなにもない左耳から聞こえた。
ふっと目線をずらすと、白石駅の階段の前に人影が。思わずスマホを落としそうになった。
「冴木くん」
聞き慣れた声で俺を呼ぶ。
俺はそっとスマホを耳から離して電源を切った。そこには電話の向こう側にいたはずの青木の姿。
ドクンドクンと心臓がうるさい。青木はゆっくりと俺に近づいてきた。
人通りが多く、ザワザワとうるさい空間で俺と青木の距離はもう手を伸ばせば触れられる距離。
「……なんでここに?」
先に口を開いたのは俺のほう。だって白石駅は俺の高校の最寄り駅で、青木は絶対に利用しないし、青木の高校からだって白石駅はただの通過駅。
まだ信じられない気持ちのほうが正直、強い。