あの雨の日、きみの想いに涙した。



「……麻奈からメールをもらって。それからずっと考えてた。冴木くんへのこの気持ちのことを」

青木も青木なりの葛藤があったんだと思う。その全部を知ることができないけど、こうして俺を待っていてくれたことが素直に嬉しかった。


「私ね……最初はただの興味本意だった」

ずっと聞けなかった青木の本音。俺はその言葉ひとつ、ひとつを聞き逃さないように必死に耳を傾けた。


「麻奈から電話で聞く冴木くんの印象は最悪で、私の親友を傷つけて許せないって思ってた」

俺は動揺も戸惑いもなかった。普通に考えたらそれが当たり前の反応で同然のことだから。


「だから冴木くんに近づいた。麻奈の口からしか聞いたことのない冴木くんは一体どんな人で、どれだけ冷たい人なんだろうって、本当に小さな興味本意だった」

青木は瞳を俺から反らさない。その間にも俺たちは色々な人から注目されていて、だれかが振り返りながらなにかを言っている。

でも俺の耳にも、青木の耳にも入らない。 

まるでこの世界にふたりしかいないみたいに。

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