あの雨の日、きみの想いに涙した。



「青木」

これからも大切で、これから先もずっと呼びたい名前。


「最初に言ったとおりこれは俺のエゴでワガママ」

そう言うと青木は首を傾げて不思議そうに俺を見上げていた。今まで色々なことを考えてきたけど、単純で簡単な素直な答え。


「せっかくこんな気持ちになれたのに、伝えないのはもったいない気がして」

そう。せっかく生まれてきたこの気持ちを俺の心だけで納めるのはもったいない。

青木は俺の手をとって繋がりだと言ってくれた。それなら今度は俺から繋ぎたい。

俺はゆっくりと青木の両手をすくい上げた。

その手は俺の手にスッポリと収まってしまうほど小さくて暖かくて、優しい。


「青木好きだよ」

俺はギュッと手を握りしめて言った。


「……っ」

「青木、好きだ」


青木はたくさんの涙を流して痛いくらい俺の手を握り返してきた。


「私も大好き……っ!」

手と手が繋がり、そして心も繋がった。

俺はそんな青木を強く、強く抱きしめた。もう離さないし、離れない。

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