あの雨の日、きみの想いに涙した。
女たちが終わって次は男の番になった。
「赤石です」
「関です」
「小野田です」
すぐに忘れてしまいそうな男たちの自己紹介が終わる。
「竹田湊でーす!白石高校一年で長崎と同中です。よろしくね!」
竹田は自分をアピールしようと趣味や好きな食べ物のことまで話はじめて、女子が引いてくれたら面白かったのになぜか盛り上がってしまい部屋の空気が無情にも明るくなってしまった。
そんな空気の中、ついに俺の番。さっさと名前だけ言って終わらせようとすると、竹田が割り込むように声を張った。
「こ、こいつ加藤!加藤由希って言うんだ。な?」と慌てて俺の代わりに自己紹介をする。
いや、な?って言われても加藤ってだれだよ。
すると竹田が小さな声で俺に耳打ち。
「……バカ。冴木由希って名前はここら辺じゃ有名なんだぜ?お前がそいつだって分かったら女子たちの興味がみんなお前にいくだろうが」
だったら俺を誘ったのは間違いじゃないだろうか。
それに興味というよりは、逆に関わりたくないって思うんじゃないかな。冴木由希を知ってるなら俺がどんな人間か分かってるだろうし。
まあ、そこで怖がられて帰られたら竹田になに言われるか分かんないし、あとあと余計に面倒になりそうだから俺は成り行きでここでは〝加藤〟を名乗ることになった。