あの雨の日、きみの想いに涙した。



それから各々飲みものを頼んで部屋の照明を暗くした。だれかが曲でも入れてくれたほうがラクなのに合コン特有のバカ話がはじまってしまった。


「ねえ、みんな彼氏いるの?」

それはもちろん恋愛の話。

俺は飲みものを飲みながら、ただ座ってるだけ。恋愛話で盛り上がってるのを見ると全身が痒くなる。


「加藤くんは彼女とかいる?」

一瞬の沈黙。

だれも答えないと思ったら加藤はそういえば俺だった。……俺に話なんて振らなくていいのに。


「いや……いないけど」

目も合わさずにうつ向いたまま答えた。


「えー嘘でしょ?絶対いるよ」

「うん!なんか加藤くんって王子様っぽいよね」

「わかるー!!肌白いし綺麗な顔してる」

「モテるでしょー?」

……うぜー。火がついたように話はじめる女たちを見て自然と眉間にシワが寄る。

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