あの雨の日、きみの想いに涙した。



スタッスタッと足音がまた響く。でもこれは俺の足音じゃなく青木夏月の足音だ。

どんどん俺に近づいてくる。そしてその足は俺の目の前で止まった。


『結局嫌い嫌いと言いながら、その女を受け入れてるのもアンタじゃない』

俺より遥かに小さい女は堂々とした顔つきで俺を見上げていた。


……なに、こいつ。

威圧感のようなものはないけれど、こんなにまっすぐな瞳で俺を見てきた女は初めてだった。


『冴木由希は冷酷人間なんかじゃない。ただ弱いだけよ』

『………』

『女たちは体を求めてもアンタの心は求めない。それはアンタに心がないからじゃない』

『………』

『冴木由希が自分の心を離そうとしないからよ』


俺はいつの間に拳を握りしめていた。


なんでこんなにもイライラするんだ?

見ず知らずの女に説教されてるから?

それとも……女の言ってることが当たっているから?

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