あの雨の日、きみの想いに涙した。
父親はあくまで母親の両親の前では普通の人を演じていた。
『リストラにあってからはなかなか仕事が見つからず妻に迷惑をかけた』
仕事なんて探してなかったくせに。迷惑してたのは仕事をしないことよりもお前の暴力だ。
『だから妻は突然いなくなったのかも知れない……。こんなに可愛い息子を置いて』
可愛い息子を殴るのがお前の愛情表現なのか?
『私は収入がないからひとりでもやっとの生活。息子を宜しくお願いします』
なんて涙を浮かべて母親の両親に俺を預けた。
吐き気がした。
今すぐにでも『こいつの話しは全部嘘だ』と打ち明けたかった。
でも自分の娘が失踪して、精神的に不安定になってるおばあちゃんとおじいちゃんにそんなことを言えるわけがなかった。
俺が言わないと知ってるかのように目の前で演技し続ける父親をまた殺したくなったことは……言うまでもない。